日本料理と「漬け」の手法

京都の白味噌「西京味噌」を使って作られた魚や肉の漬物「西京漬」。これを焼いたお料理を「西京焼き」といいます。

西京焼きは、一般の食卓にも、またちょっとあらたまった食事の席などにも出される万能な日本料理ですが、西京焼きとよく似た日本料理に、粕漬けや味噌漬けがあります。粕漬けや味噌漬けと西京漬けの違いは、ひとことで言ってしまうと「漬け床の違い」になります。

粕漬けの場合はその名の通り「粕」に漬け込んで作られます。「粕」とは「酒粕」のことで、粕漬けは酒粕を塩や砂糖で調味したものに具材を漬け込むという形です。

味噌漬けの場合は、味噌に漬け込むので、広義では西京漬けも味噌漬けの中に含まれます。実際、味噌漬けの中には、西京漬けと同じような白味噌を漬け床として作られているものも存在します。

もちろん、白味噌だけでなく、その他の味噌を漬け床として作られている味噌漬けもたくさんあります。

この違いは、同じ味噌でも西京味噌を使っているかいないか、という点で呼び方が変わっています。白味噌で漬けられている味噌漬けの場合は、見た目だけでは「西京漬」なのか「味噌漬」なのかわからない場合もしばしばです。

幽庵焼きと西京焼き

また、粕漬けや味噌漬けのほかに、日本料理には「幽庵焼き」と呼ばれる焼き物も存在します。

幽庵焼きとは「幽庵地」と呼ばれる漬け床に魚などを漬け込んで焼くというもので、基本的には粕漬けや味噌漬け、西京漬けと似たような料理です。

幽庵地は、酒・醤油・みりんにゆずや酢橘、カボスなどの柑橘類の輪切りを加えて爽やかさをプラスしたものとなります。

粕床や味噌床のようにどろっとしておらず、サラサラした漬け床なので、イメージ的には漬け床というよりも、漬けダレに近いかもしれません。

幽庵焼きもまた、西京焼きと同じように一般家庭の食卓から、ちょっとあらたまった場面でのごちそうメニューのひとつとしても使われます。

ちなみに、幽庵焼きが江戸時代に茶人であった「北村祐庵」によって創案されたものと言われているのに対し、西京焼きを含む味噌漬に関しては平安時代から作られていたといいますから、歴史的には西京焼きの方が古いです。